写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里
MotoGP第12戦チェコGP
7月18日~20日/チェコ ブルノ・サーキット
Moto2クラスに2種類の開発タイヤを供給
チェコGPは2020年以来、5年ぶりの開催となりました。ピレリが前回このサーキットでタイヤを供給したのは、2018年、スーパーバイク世界選手権(WSBK)でのことです。
2025年のブルノ・サーキットは路面が再舗装されたため、この新しい路面でのレースは初となります。7月頭にブルノ・サーキットでプライベートテストを行ったライダーたちの話によると、アスファルトは非常に滑らかでハイグリップとのことでした。一方で、フロントタイヤには厳しく、タイヤ右側の摩耗に厳しいサーキットであるという過去の特徴は変わらないと見られます。
このサーキットでの週末に、ピレリはMoto2クラスのリヤタイヤとして、ソフトコンパウンドの開発タイヤ、E0125と、ミディアムコンパウンドの開発タイヤ、D0922をアロケーションしました。なお、レースでは全ライダーがE0125を選択しています。
また、チェコGP後のMoto2、Moto3クラスのテストでは、フロントタイヤの開発に重点を置き、Moto2用に1種類、Moto3用に2種類の開発タイヤを用意しました。
Moto2:最終ラップに國井勇輝と佐々木歩夢が接触
Moto2クラスの決勝レースでは、日本人ライダーの2人が接触するシーンがありました。最終ラップの10コーナーで、國井勇輝(イデミツ・ホンダチームアジア)が佐々木歩夢(RW-イドロフォーリャ・レーシングGP)を抜きにかかり、両者が軽く当たったのです。この結果、アウト側にいた佐々木は転倒を喫し、リタイアとなりました。
この接触に対し、國井には次戦の決勝レースでのロングラップ・ペナルティ(※レース中、ランオフエリアに設定されたルートを走行しなければならないペナルティ)が科されました。國井は、転倒の状況についてこう説明しています。
「最終ラップでしたし、いい勢いで歩夢に追いついていたので、その勢いのままいきたかったんです。歩夢も最終ラップだと分かっていたので、ブレーキングでインを閉めていた、ということもあったと思います」
「抜き切れるところにいなかったのに、抜こうとしてしまったのはボクのミスです。歩夢にも、歩夢のチームや関係者にも、申し訳ない気持ちです。ただ、レースでは起こりうることです。歩夢もそこは承知していると思います」
決勝レースを23位で終えたチェコGPの週末としては、「金曜日からまったくいいフィーリングがなかった。もっと悪い結果を想像していたので、悪くはなかったんじゃないかなとは思います」と振り返っていました。
一方、転倒リタイアとなった佐々木は、接触について「仕方ないです。レーシングアクシデントだったと思います」と、國井と同じ見解を示しました。
「今日はバイクのセットアップが悪かったので、転倒よりもそちらのほうが悔しかったです。今日は暑くなってコンディションが変わったのもあるかもしれませんが、フロントにずっとチャタリングが出てしまいました。それがメインの問題だったと思います」
チェコGPには、ドイツGPに続き、マリオ・アジの代役として羽田大河がイデミツ・ホンダ・チームアジアから参戦しました。2023年ぶりにMoto2マシンを走らせた羽田は、24位でゴールしています。
「予選でいいフィーリングがあって、決勝レースでグループについていけるかなと思っていたのですが、ほかのライダーに邪魔されたり、ぶつかったりしていたら、前のグループと離れてしまいました。そこにいた自分が悪い、とも言えると思います。久しぶりのMoto2で楽しかったけれど、いいフィーリングがあったので、もう少し前のほうでレースしたかったな、という悔しさはありますね」
Moto3:予選のエンジントラブルが響いた山中琉聖
Moto3クラスでは、山中琉聖(フリンサ-MTヘルメット-MSI)が9位でゴールしました。山中にとっては、予選Q2でのエンジントラブルが大きくレースに影響しました。現在の週末のタイムスケジュールでは、Moto2、Moto3クラスは日曜日のウオームアップ・セッションがありません。予選でトラブルが発生したり、転倒したりした場合、マシンの状況を確認できないまま、決勝レースを迎えなければならないのです。
「路面が再舗装されてグリップが上がったために、初日からフロントタイヤを押してしまう問題が出ていたんです。予選に向けていいアイデアが見つかったのですが、予選1周目でエンジンが壊れてしまって、そのアイデアを試せずに決勝レースに挑むことになりました」
「決勝レースでもリヤのグリップが高いときにフロントを押してしまって、後半までそれが続きました。攻めたらすぐにでも転んでしまいそうで、ずっとそんな状況との戦いでした。厳しいレースになりました」
初めてブルノ・サーキットを走った古里太陽(ホンダ・チームアジア)は11番手でゴールしましたが、最終ラップに他のライダーと接触し、そのライダーを転倒させたとして、6秒のタイムペナルティとなり、最終的に16位となりました。
MotoGPは、チェコGPでシーズン前半戦を締めくくりました。後半戦は、8月15日~17日に行われるオーストリアGPから始まります。