アドベンチャーバイクの遊び方はライダー次第。用途や走る場所はもちろん、一緒に楽しむ仲間によって選ぶタイヤが大きく変わってくる
世界的に盛り上がりを見せる『アドベンチャー』カテゴリー。ピレリはロードスポーツタイヤの繊細な細分化で有名だが、実はアドベンチャー用タイヤの種類も驚くほど豊富! 「なぜこんなに種類がある?」「どうやって選べば良い?」知っておくとアドベンチャーライフがさらに充実すること間違いなし。
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じつはボク、いままでオンロードバイクしか乗ってこなかったのですが、最近はビッグアドベンチャーバイクも気になっているんですよ。
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おー、新たなカテゴリーへの挑戦は、バイク趣味の幅が広がって良いね(笑)。でも、どうしてビッグアドベンチャーに興味を持ったの?
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ロングツーリングにも使えるし、どんな場所にも走っていけそうな冒険する感じに憧れます。そしてなんといってもスタイリングに迫力があって、カッコいい! それで気になってピレリのWEBサイトを見たら(https://www.pirelli.com/tyres/ja-jp/motorcycle/catalog/riding-experience/adventure)、アドベンチャー用タイヤってたくさん種類があるんですね。
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ピレリはロードタイヤはもちろん、アドベンチャーやオフロードタイヤにも力を入れているからね。
SCORPION TRAIL Ⅲ

ANGEL GT

ANGEL GTⅡ

MT60

SCORPION RALLY STR

SCORPION RALLY

MT21 RALLYCROSS

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もし、アドベンチャーを所有したら見た目がカッコいいから、ゴツゴツしたオフロードタイヤを履いてみたいなぁ。ちなみにオンロードタイヤのようなトレッドのタイヤでもオフロードを走れるんですか?
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おっ、良いところに気づいたね! でもその答えを導き出す前に、まずは「アドベンチャータイヤになぜ多くの種類があるのか?」を考えてみよう。実はアドベンチャーは、世界的に人気が高まっているカテゴリー。バイクには『ツアラー』や『ロードスター』と呼ばれるロングツーリングや旅向けのカテゴリーがあるけれど、近年はアドベンチャーに吸収されているモデルも増えている。とくに大排気量のBMW・R1300GSシリーズやドゥカティ・ムルティストラーダV4シリーズなどは、長距離性能にも長けているし、ワインディングも林道もタンデムもいける。欧州ではバカンスの期間が長くて、国を跨いでのロングツーリングも盛んだから、そういった使い方にとても合っているんだ。

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日本にいると想像するのが難しいくらいスケールが大きな話ですね。でもそういった背景で鍛えられているのもアドベンチャーの魅力。憧れるなぁ。
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他にもホンダ・CRF1100Lアフリカツインやヤマハ・テネレ700、ドゥカティ・デザートXなど、もっとオフロード性能に特化したモデルもある。ピレリとしてはこのジャンルを、アドベンチャーとは別に『マキシエンデューロ』と呼んでいるんだ。とは言えアドベンチャーもマキシエンデューロも、すべてのユーザーがオフロードやダートばかりを走っているわけではない。

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それはそうですよね。ボクも実際にアドベンチャーに乗ってみるまで、あの巨大なバイクでオフロードに飛び込んでいいのか分からないですから…。
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アドベンチャーの使い方を分類すると以下の3つになるかな。「オンロードツーリングや長距離ツーリングが主体の人」「過酷な道(オフロード)にチャレンジしたい人」「オン&オフ、両方楽しんでみたい人」そこにアドベンチャーとマキシエンデューロの2カテゴリーがあるから、単純に考えてもピレリとしては『3×2=6種類』のタイヤが必要になるんだよ。
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なるほど~! なんかワクワクしてきました!! でも、種類が多いとタイヤを選ぶのに悩んじゃいそうです。
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そうだね。そもそもアドベンチャーは、昔だとデュアルパーパスとかマルチパーパスと呼ばれたりしていた。これは「いろいろな道を走れる」という意味で、もちろんバイクメーカーもそれを魅力にした製品づくりをしている。だからピレリもアドベンチャーのOEM(標準)タイヤを作る際は、まずは「オンもオフも走れるタイヤ」となるんだ。それがスコーピオンラリー STRやMT60かな。だけどユーザーの中には、オフロードを積極的に走りたい人もいるから、そちらの性能に特化したのがスコーピオンラリーだね。じつはこのタイヤには、もっと本格的なスコーピオンラリー・レーシングセットもあるけど、さすがに公道で使う人はいないね。
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スコーピオンラリーSTRとスコーピオンラリーって一見すると似ているけれど、よく見ると違うんですね。あれっ? このいかにもオフロードタイヤって感じのMT21 ラリークロスは?
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これはピレリの超ロングセラーオフロードタイヤ。1980~90年代に流行った250㏄クラスの4ストロークや2ストロークの市販オフロード車向けに作られたタイヤなんだ。オフロードバイクは寿命が長いというか、今でも当時のバイクを乗っている人が多い。現在このクラスは、国内モデルだとホンダ・CRF250L/RALLYとカワサキ・KLX230シリーズだけになって、ちょっと寂しいけどね。
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スコーピオントレールⅢやエンジェルGT、エンジェルGTⅡは、ブロックが小さくてオンロード向きに見えるけど、このタイヤでもオフロードを走れるんですか?
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う~ん、スコーピオントレールⅢは砂利の少ないフラットダートならイケるんじゃないかな……。エンジェルシリーズはオンロード専用と思ってもらったほうが良いね。
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でもでも、せっかくアドベンチャーを手に入れたのに、オンロードしか走れないタイヤを履いたら、なんだかもったいない気がしますが……。それにオフロードタイヤのほうがなんだか強そうでカッコいいし。
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そう感じるのもよく分かる。先ほども言ったけど、だからアドベンチャーの新車は、オンもオフも走れるタイヤを標準装備していることが多いし、ピレリもスコーピオンラリー STRのようなタイヤをラインナップしているんだ。みんな、アドベンチャーを手に入れて乗り込んでいくうちに、自分の指向(嗜好)や使い方が決まってくる。ヘビーな林道やオフロード走行に没頭する人もいれば、ほとんど舗装路のロングツーリングの人もいる……。もちろん「舗装路ときどき未舗装路」の、いわゆるアドベンチャーらしい使い方の人もいるよね。これは付き合う仲間やショップによっても大きく変わってくるからショップ選びも大事になる。そして当然、走っているうちにタイヤは減るわけで、そこで自分の使い方に合ったタイヤを選べばいいんじゃないかな。
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確かに、実際にアドベンチャーに乗ってみないと分からないですよね。でも想像するだけでワクワクできます。
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そうだね。だからBMWのGSシリーズに乗るロングツーリング派のライダーは、エンジェルGTⅡを履いている人も多い。ライフが長くて雨天や寒い時期にも強いし、高速道路での乗り心地も良いからね。スコーピオントレールIIIはピレリの最新アドベンチャータイヤだから、最新の電子制御も考慮して作り込んでいる。トレッドパターンもエンジェルほどロード寄りじゃないからアドベンチャーらしさも保てるね。コアなオフロード派はどうしても高速道路走行は犠牲になる。ブロックが大きいタイヤはやはりロードノイズが大きくなるし、アベレージを上げるとタイヤの摩耗も進むからね。だから、カッコいいとか強そうとおいう理由でオフロードタイヤを選んだらダメなんだ。


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た、確かに。もしかしたらロードタイヤよりも使い方に合わせて選ぶ必要がありそうですね。
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その通り! たとえばロードバイクにディアブロロッソ Ⅳを履いてもエンジェルGTⅡを履いても、ワインディングを走って「うわぁ、タイヤ選び失敗した!」とはならない。しかし、スコーピオントレールⅢを履いたアドベンチャーで過酷な林道に分け入って「エラい目にあった……(泣)」となる可能性はあるからね。
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でも知識がないとやってしまいそうな気もして怖いですね。ボクの場合、オフロードタイヤで高速道路を連続走行して、タイヤの摩耗が早い!ってなってしまうところでした。
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ちなみにオフロード用のブロックタイヤって性能差を出しにくい製品でもあるんだ。とくに過酷なオフロードシーンになると、ライダーのテクニックに依存する部分が大きく、これは本格的なオフロードレースも同じ。オンロードはサーキットも含めて、天候や気温の変化があるとはいえ、走る環境が大きく変わることは少ないけれど、オフロードは目まぐるしく変化する。たとえばレースでも前を走るか後ろで走るかで走行ラインが変わるし、前日に雨が降ったりしたらまったく別モノになってしまうんだ。ところがスピード域が低ければ、見よう見まねで作ったタイヤでも、空気圧を下げると意外と行ける。だけどスピード域が高くなると対処できなくて、タイヤ本来の性能の差が如実に出る。ピレリはこういった部分の性能も大切に開発しているんだ。

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あ~、なんだかますますビッグアドベンチャーに乗りたくなってきた。タイヤ選びも面白そうだし。
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アドベンチャーに乗ると、自分のバイクライフの指向がいっそう明確になるかも。そこでマッチングするタイヤを選べば、楽しさも倍増するね!そうだ、中古車を購入する場合は注意。すでにオン&オフ両方楽しめるタイヤではなくなっている可能性があるからね。