写真:Pirelli、Gold & Goose / Red Bull Content Pool
テキスト:伊藤英里

MotoGP第9戦イタリアGP
6月20日~22日/イタリア ムジェロ・サーキット

Moto2クラスのリヤにスーパーソフトSCXを投入

ピレリは、Moto2クラスのリヤタイヤのひとつとして、スーパーソフトのSCXをアロケーションしました。このタイヤは、第5戦スペインGP、第6戦フランスGPで、すでに投入されたものです。

SCXはソフトコンパウンドのSC0よりも柔らかいコンパウンドを採用しており、比較的気温の高いコンディション、タイヤへの負荷が少なめのサーキットに適しています。このタイヤは、Moto2クラスの決勝レースで全ライダーに選択されました。

Moto3:古里太陽、惜しくも6位

Moto3クラスの決勝レースでは、古里太陽(ホンダ・チームアジア)が表彰台争いを展開しました。最終ラップに入ったとき、メインストレートでは3番手付近を走っていたのですが、1コーナーのブレーキングでポジションを落とし、6位でゴールしています。

「このサーキットはスリップ(ストリーム)が利くので、こういうレースになると思っていました」と、古里はレースを振り返りました。

ムジェロ・サーキットはメインストレートが1km以上あり、また、連続する高速コーナーでもスリップストリームが利きます。混戦になると予想していたものの、古里が後退したのは、最終ラップの1コーナーのミスでした。

「ウイークを通して調子がよかったので、こういうレースができるとは予想していました。ただ、最終ラップの1コーナーでミスをして、少しポジションを落としたのがいちばん痛かったです。このミスが(6位という)リザルトにつながってしまいました。これからはそういうミスを減らすしかないと思っています」

「レースのマネジメントはよかったので、最後のポジション、位置取りで学ぶことがありましたね」

山中琉聖(フリンサ-MTヘルメット-MSI)は、予選でエンジントラブルが発生し、エンジンを乗せ換えて決勝レースを迎えました。15番手からスタートした山中でしたが、ストレートでの加速に苦しみ、それでも10位でゴールを果たしています。

「何が問題か分かりませんが、抜けないし、抜ける場所も限られているレースでした。コーナー立ち上がりに向けてうまくためを作っても、ストレートでまったく抜けなかったんです。ブレーキングでも抜けず、抜く場所も限られていて、コーナーの切り返しで抜くだけでした。ほんとに厳しいレースでしたね……」

Moto2:佐々木歩夢、内容のある19位

佐々木歩夢(RW-イドロフォーリャ・レーシングGP)は、19位でゴールしました。ジェイク・ディクソン(エルフ・マークVDSレーシングチーム)やトニー・アルボリーノ(BLU CRUプラマック・ヤマハMoto2)など、上位を走るライダーとポジションを争ってのレースでした。

佐々木は厳しい状況を脱しつつあるようで、19位という結果以上に内容のあるレースだったと述べています。

「ペースとしてはMoto2のレースでいちばんよかったと思います。今のMoto2クラスは本当に差が少ないんです。少しでも調子が悪いと、(ディクソンやアルボリーノのような)トップ選手でも自分と同じような順位にいるんですから」

「確実にフロントのフィーリングがよくなってきて、しっかり攻められるようになってきました。それによってセットアップも少しずつ詰められるようになってきています。今年のMoto2のレベルは今まででいちばん高くて、トップとの差が少なく、そこで苦しんでいるところはありますが、確実にスピードは上がってきています。今日のレースは19位でしたが、Moto2でいちばんよかった19位だと思います」

一方、國井勇輝(イデミツ・ホンダチームアジア)は、土曜日までのいいフィーリングを決勝レースに維持できませんでした。スタートで出遅れ、23位でゴールしました。

「想定したペースで走れなくて、レースペースが厳しい状態でした。全体的にペースは遅かったのですが、自分が合わせきることができなかった。自分でも引き出しを見つけられてないのかな、というのがいちばんの印象ですね。ウイークを通して、今までよりもいいフィーリングで走れていただけにとても残念です。ペースが作れなかったのは、今後の課題ですね」

レッドブルMotoGPルーキーズカップ:大集団の混戦。三谷然はレース1で8位

MotoGP第9戦イタリアGPには、レッドブルMotoGPルーキーズカップ第4戦イタリア大会が併催されました。

レッドブルMotoGPルーキーズカップは、若手ライダー育成を目的とした「Road to MotoGP」の一環の選手権で、ヨーロッパのMotoGPに併催されます。2025年にMotoGPクラスデビューを果たした小椋藍(トラックハウス・MotoGP・チーム)など、多くのトップライダーがこの選手権を経由して、世界選手権へとステップアップしていきました。

タイヤはピレリのワンメイクで、供給されるのは、イデミツ・アジア・タレントカップと同じくDIABLO™ SUPERBIKE SC2(ミディアム)のみです。マシンもワンメイクで、KTMのRC250Rが供給されます。

日本人ライダーとしては、2024年イデミツ・アジア・タレントカップチャンピオン、三谷然が参戦しています。

三谷は、予選で8番手を獲得して、土曜日に行われたレース(レース7)に3列目から臨みました。

三谷が「人生でいちばんの大集団でのレースでした」と語ったように、レースは15名以上のライダーによる混戦となりました。トップ付近を走ったかと思えば、10番手あたりにまで後退するような接戦を展開し、三谷は8位でゴールしました。

「残り2周までは自分が思うレースができていたんです。終始、3、4番手あたりでは走れていて、自分がいたい位置でレースができていたんですが、最後でレースの組み立て方を間違えてしまいましたね」

日曜日のレース(レース8)もまた、大集団のレースでした。大きなグループのなかで、三谷は終盤に7、8番手あたりを走行していましたが、残り2周の9コーナーで押し出され、以降は挽回するレースとなりました。三谷は、12位でゴールしました。

「(接触した)相手も『いけるかな』と思ったけれど抜き切らずに当たってしまったのだろうと思います。昨日に比べて、今日は接触が多かったです。そんな中で、ちょっと当たり負けしていましたね。ヨーロッパのライダーに比べて、ボクはそういう強さが足りなかったのかな、と思います」

レッドブルMotoGPルーキーズ第5戦ドイツ大会は、MotoGP第11戦ドイツGPに併催で、7月11日から13日にかけてドイツのザクセンリンクで行われます。

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イタリア大会は、2レースともに大集団でのレースとなった
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接戦の中、三谷(#34)は上位も走るパフォーマンスを見せる
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単身ヨーロッパで戦う三谷。言語やメカニック、ライダー同士のコミュニケーション含め、この選手権に参戦することで得られる糧は多い