写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里

WSBK第8戦ハンガリー
7月25日~27日/ハンガリー バラトンパーク・サーキット

リヤの開発ソフトE0125を用意

第8戦のハンガリーラウンドは、バラトンパーク・サーキットでの初開催となりました。ハンガリーラウンドとしては、35年ぶりの開催です。

このラウンドに、ピレリはスタンダードのほか、リヤの開発ソフト、E0125をアロケーションしました。このE0125は、レース1、2ともに、ほとんどのライダーによって選ばれています。レース2では優勝したトプラク・ラズガットリオグル(ROKiT BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)、2位のニッコロ・ブレガ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)、3位のサム・ロウズ(エルフ・マークVDSレーシングチーム)がE0125をチョイスしました。

また、ハンガリーラウンドのスーパーポール・レースで、スーパーバイク世界選手権(WSBK)は1000レース目を迎えました。1988年に始まったWSBKの第1戦はイギリスのドニントンパークで行われ、レース1で優勝したのはダビデ・タルドッツィでした。現在、タルドッツィはMotoGPに参戦するドゥカティ・レノボ・チームのチームマネージャーを務めています。

そして、1000レース目で優勝したのはラズガットリオグルです。ラズガットリオグルは、ハンガリーラウンドの3レースを制し、エミリア・ロマーニャから3戦連続でハットトリックを達成しました。

ラズガットリオグル、難しいコンディションも適切なタイヤ選択で勝利

レース1は1周目の2コーナーで多重クラッシュが発生し、このため赤旗中断となりました。このクラッシュではアンドレア・イアンノーネ(チーム・パタ・ゴーイレブン)、ダニロ・ペトルッチ(バーニー・スパーク・レーシングチーム)、イケル・レクオーナ(ホンダHRC)を含む7名が転倒を喫しました。

このアクシデントにより、イアンノーネの危険なライディングに対し、ダブル・ロングラップ・ペナルティ(※レース中、ランオフエリアに設定されたルートを走行しなければならないペナルティ。ダブルの場合、これを2回消化しなければならない)が科されました。

このアクシデントにより、レクオーナは左手首を骨折、イアンノーネ自身も負傷してレース2は出走できず、数名のライダーが病院に向かうことになりました。

こうしたレースにもかかわらず、ラズガットリオグルは再開されたレースで、2位のブレガに対し3秒以上の差をつけて優勝しました。

翌日曜日のスーパーポール・レースは午前中に降った雨により、ウエットパッチが残る難しいコンディションでした。タイヤ選択はスリックとインターミディエイトで判断が分かれましたが、ラズガットリオグルは、ここでスリックタイヤを選択。この選択が奏功し、ラズガットリオグルはスーパーポール・レースで勝利。続くレース2でも優勝して、ハットトリックを達成しました。

ラズガットリオグルはハンガリーラウンドについて、WorldSBK.comのインタビューでこう語っています。

「最初からとても強い走りができていたんだ。このコースはみんなにとって初めて走る場所だけど、ボクはすぐに適応した。チームはすごくいい仕事をしてくれたよ」

「スーパーポール・レースはちょっと難しかったね。ウエットパッチがたくさん残っていたから。乾いているのはラインだけで、まだ濡れているコーナーもあった。でもボク達はミスをしなかったし、ペースに集中したよ」

また、WSBK1000レース目となったスーパーポール・レースで優勝したことについて「このレースはとても重要だった。ボクはこれまで800レース、900レースで優勝してきたから、1000レース目での優勝がほしかったんだ。優勝できてうれしいし、このレースはすごく特別だ。MotoGPへの挑戦を前に、スペシャルなレースで優勝できたんだからね」と喜びを表していました。

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9連勝、そして3戦連続のハットトリックを達成したラズガットリオグル

ブレガ、スーパーポール・レースでノーポイント

一方、ランキング2番手のブレガは、レース1とレース2では2位を獲得しましたが、スーパーポール・レースではインターミディエイトを選んだことで13位に終わってノーポイントでした。

この結果、チャンピオンシップのランキングトップであるラズガットリオグルは、ブレガに対し、26ポイント差を築いています。

「難しい週末だったよ。金曜日はバイクのフィーリングがまったくなくて、土曜日のレース1でよくなったんだ。でも、今日(日曜日)の午前中は複雑なコンディションで、このコンディションではうまくいかなかった。こんなに早く路面が乾くとは思わなかったからインターミディエイトを選んだんだけど、間違っていたね」(WorldSBK.comのインタビューより)

次戦のフランスラウンドについては「マニクールは自分にとって有利なコースだと思う。昨年、2レースで勝っているしね。もちろん、トプラクがひどいクラッシュのせいで欠場していたわけだけど。(次戦も)全力を尽くすよ」と語っています。

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スーパーポール・レースで痛いノーポイントに終わったブレガ。次戦でポイント差を縮められるか

また、レース2ではサム・ロウズが3位表彰台を獲得しました。2024年にロードレース世界選手権Moto2からWSBKに転向したロウズは、これまでにスーパーポール・レースでのトップ3はありました。今大会のスーパーポール・レースでも、2位を獲得しています。しかし、ロングレース(レース1またはレース2)については、レース2の3位が初めての表彰台となりました。

「ダブル・ポディウムを達成できてとてもうれしいよ。週末の天気予報はウエットになるかも、ということだったけど、ウエットだったのはウォームアップだけで、スーパーポール・レースは半分ドライだったね! レース2もドライ。ライダーにしたら、ドライでレースしたほうがいいに決まってる。レース2で表彰台に上がれたのは本当にうれしいよ」

「レース2は、ちょっとだけ苦戦したんだ。土曜日のレース1で転倒してしまったから、少しだけデータが足りなかったかもしれない。ブレガのほうが少し速かったけど、決定的だったわけではないし、多少学ぶこともできた。トプラクはずっと前にいて、まったく別のレースをしていたけどね」

「シーズン前半戦をこうして終えられてとても満足しているし、毎戦少しずつ、だんだん強くなっていると感じている。土曜日の転倒から立て直してくれたチームには、本当に大きな感謝を伝えたいよ」(WorldSBK.comのインタビューより)

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ロウズは、今大会のレース2で、ロングレースで初の表彰台を獲得した
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レース2で優勝したラズガットリオグル(中央)、2位のブレガ(左)、3位のロウズ(右)

第9戦フランスラウンドは、約ひと月を挟んで、9月5日から7日にかけて、フランスのマニクール・サーキットで開催されます。