写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里

WSBK第3戦オランダ
4月11日~13日/オランダ TT・サーキット・アッセン

歴史あるアッセンに開発タイヤのスーパーソフトを投入

WSBKの第3戦の舞台はTT・サーキット・アッセンです。アッセンのレースの歴史は1925年の公道レース「ダッチTT」から始まり、この長い歴史から「ロードレースの大聖堂」とも呼ばれています。

また、天候が変わりやすく、ころころと変わる天候は「ダッチ・ウェザー」と称されます。

このオランダラウンドに、ピレリはフロントタイヤにスタンダードのミディアム(SC1)とハード(SC2)、リヤタイヤにスーパーソフト(SCX)、ソフト(SC0)とスーパーポール(予選)、スーパーポール・レース用のエクストラソフト(SCQ)のほか、スーパーソフトの開発仕様であるE0126を初投入しました。

また、レインタイヤとしてはフロントタイヤの開発仕様であるE1058が新たにアロケーションされています。

ブレガを襲った2度のマシントラブル

オランダラウンドは、3レースで異なる勝者が誕生しました。昨シーズンに引き続き、開幕戦と第2戦までニッコロ・ブレガ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)とトプラク・ラズガットリオグル(ROKiT BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)が優勝を分け合う状況だっただけに、これまでとは異なる展開のレースウイークだったと言えるでしょう。

そのひとつの要因は、ブレガを襲ったマシントラブルでした。レース1で優勝を飾ったブレガは、スーパーポール・レースは2番手走行中に、そしてレース2ではトップを走行中の残り2周でマシントラブルによってスローダウン、リタイアを余儀なくされたのです。レース2では、スーパーポール・レースのリタイアにより10番手からスタートしてレース中盤にはトップに浮上し、レースをリードしていた中でのリタイアでした。

「なんて言ったらいいのか分からないよ」と、ブレガはWorldSBK.comの中で語っています。

「スーパーポール・レースでは問題が発生したけど、レース2ではすごく好調だったんだ。レースをリードしてギャップを広げていたのに、残り2周でまたバイクが止まってしまった。どちらのトラブルも同じもののように感じている。今、チームが原因を調べているところだ」

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レース1で優勝したブレガ(中央)、2位のアンドレア・ロカテッリ(左)、3位のダニロ・ペトルッチ(右)。ラズガットリオグルは4位で表彰台を逃した
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オランダラウンドはブレガの週末になるかと思われたが……

レース1、2で表彰台を逃したラズガットリオグル

そして、この週末に苦しんだのはラズガットリオグルでした。ラズガットリオグルはウエットコンディションのスーパーポール・レースでは優勝したものの、ドライコンディションだったレース1とレース2では表彰台を逃しました。特にレース2は周回ごとに後退し、8位でレースを終えています。

ラズガットリオグルは、レース1ではフロントにハード(SC2)、リヤに開発仕様のスーパーソフト(E1026)を使用しましたが、レース2はリヤタイヤをソフト(SC0)に変更しています。また、バイクのセッティングにも変更を施しましたが、どちらもうまく機能しなかったのです。

「残り8周で(前日と)同じ問題が発生した。リヤタイヤが終わってしまったんだ。チャタリングというわけじゃないんだけど、スロットルを開けるとタイヤが滑って動いてしまい、走るのが難しかった」と、ラズガットリオグルはWorldSBK.comのインタビューで答えています。

「ピットに戻ろうか」と考えるほど、周回ごとに悪くなっていく状況だったそうです。

「8位や7位は僕にとっては意味がない。でも、そのあと僕はポイントのことを考えた。チャンピオンシップは長いし、まだシーズン序盤だ。できるだけいいポジションでゴールしようと努めたんだ」

ブレガがマシントラブルでリタイアし、ラズガットリオグルが8位でゴールしたことで、チャンピオンシップのランキングトップであるブレガとランキング2番手のラズガットリオグルとの差は21ポイントに縮まっています。

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スーパーポール・レースはウエットコンディションで、このコンディションがラズガットリオグル(中央)には味方した形となった

ロカテッリがレース2でWSBKにおける初優勝を飾る

そして、レース2ではアンドレア・ロカテッリ(パタ・マクサス・ヤマハ)が優勝を果たしました。ロカテッリはブレガがマシントラブルでリタイアするまで2番手につけ、ブレガがリタイアしたあとはトップに立ってチェッカーを受けました。ロカテッリにとって、これがWSBKにおける初優勝となりました。

「素晴らしい日だよ!」と、ロカテッリはWorldSBK.comのインタビューで初優勝のヨロ込みを語りました。

「この瞬間を楽しまないとね。初表彰台を獲得した2021年から、ここにはいい思い出があるんだ。そして、今回は初優勝を果たした。これにはきっと意味がある。チームは今週、素晴らしい仕事をした。僕たちは、ウエットでもどんな状況でも強かった。この道を突き進み、前を向いて進んでいく必要がある」

今季のロカテッリはこれまでにもブレガやラズガットリオグルに次ぐパフォーマンスを見せてきました。オランダラウンドを終えて、ロカテッリは現在チャンピオンシップのランキング3番手につけています。

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レース2で優勝したロカテッリ(中央)、2位のアルバロ・バウティスタ(左)、3位のレミー・ガードナー(右)。ブレガとラズガットリオグル不在の表彰台は久々である

第4戦イタリアラウンドは、5月2日から4日にかけて、イタリアのクレモナ・サーキットで行われます。