写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里

WSBK第5戦チェコ
5月16日~18日/チェコ アウトドローモ・モスト

開発仕様のミディアムE0250が初登場

第5戦チェコラウンドが開催されるアウトドローモ・モストはタイヤの摩耗と負荷が厳しいサーキットのひとつです。ピレリは、このようなサーキットでのレースをミディアムコンパウンドの開発仕様を試すのに絶好の機会ととらえ、リヤに新しいミディアムコンパウンドをアロケーションしました。

今大会にアロケーションされた開発仕様のミディアムE0250は、すでに投入されてきた開発仕様ミディアムD0922と同じコンパウンドを使用しながらも異なる構造を採用しており、安定性と一貫性の向上を目指しています。

さらに、このサーキットの特性に合わせ、スーパーポール(予選)とスーパーポール・レース向けにソフトコンパウンドのSC0を用意しました。

BMWとドゥカティに燃料流量制限

第4戦を終え、FIMスーパーバイク・レギュレーションに基づき、BMWとドゥカティに2度目の燃料流量制限が科されました。

BMWのパフォーマンス評価値は、FIMスーパーバイク・レギュレーション2.4.3.2「オーバーパフォーマンス・ペナルティ」に基づき、規定された基準値-0.250を下回りました。同時に、次のステップである-0.500までは至らなかったため、「ステップ1の燃料流量制限(-0.5kg/h)」が科されました。

また、FIMスーパーバイク・レギュレーション2.4.3(h)「コンセッションおよびスーパーコンセッション」に基づき、ドゥカティは当該チェックポイントにおいて、他メーカーよりも12ポイント以上多くのコンセッションポイントを獲得し、許容上限を超えたため、2.4.2.2に従い、「ステップ1の燃料流量制限(-0.5 kg/h)」が適用されました。

これにより、アウトドローモ・モストの燃料流量制限は48.1kg/hと設定されたため、BMWとドゥカティの燃料流量制限は47.1kg/hとなりました。

ラズガットリオグルの3勝を止めたブレガ

こうして迎えたチェコラウンドですが、今大会もまた、チャンピオンシップのランキングトップであるニッコロ・ブレガ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)と、ランキング2番手のトプラク・ラズガットリオグル(ROKiT BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)の一騎打ちとなりました。

レース1、スーパーポール・レースの展開はほぼ同じで、レース序盤はブレガがラズガットリオグルに先行してトップを走るものの、その後、ラズガットリオグルがブレガをパス。そのままラズガットリオグルがトップを守って優勝を飾る、というものでした。

worldsbk-2025-rd5-race1-podium.jpg
レース1で優勝したラズガットリオグル(中央)、2位のブレガ(左)、3位のダニロ・ペトルッチ(右)
worldsbk-2025-rd5-toprak-razgatlioglu.jpg
ブレガ(#11)のトップをラズガットリオグル(#1)が奪い、優勝。それがレース1とスーパーポール・レースの展開だった

ラズガットリオグルが2レースを制して迎えたレース2もまた、同様の展開かと思われました。ブレガがレースをリードし、その後ろにラズガットリオグルがぴたりとつけ、レース中盤にブレガをパスしました。

しかし、このレースでは、ここからが違いました。一時、ブレガはラズガットリオグルに1秒近くの差をつけられたものの、そこから挽回したのです。最終ラップ、ラズガットリオグルの背中に迫ったブレガは、フィニッシュラインを通過する瞬間にラズガットリオグルをかわしたのでした。その差は、わずか0.027秒でした。

ブレガは、WorldSBK.comのインタビューで、スーパーポール・レースからレース2までにバイクを改善したのだと説明しています。

「素晴らしい気持ちだよ。トプラクはどのレースでもアドバンテージがあったし、彼のペースはすごかった。レース中盤には1秒くらいの差があったけどあきらめず、残り2、3周あたりで、アドバンテージを持つことができた。最終ラップはすべての手札を使ったよ。ボクは本当に限界で走っていて、あれ以上は無理だった。最終ラップには横にスリップしたし、スピニングもあったしトラクションコントロールもおかしな感じだったけど、勝ててよかったよ」

一方、レース2の最後でブレガの後塵を拝したラズガットリオグルは、最終ラップ、最終コーナーを立ち上がってメインストレートに入ったとき、トラブルが起きた、とWorldSBK.comのインタビューで説明しています。

「全ラップ、全力を尽くしていたんだ。でも、最終ラップの最終コーナーで、どうしてか分からないけど、2度、出力が途絶えたんだ。そして、優勝を失った……。これについては本当に怒っている。燃料か電子制御が原因かもしれない。今はチームの回答を待っているところなんだ。全ラップで攻めて、最後のストレートで優勝を失うなんて……満足なんてできないよ」

worldsbk-2025-rd5-race2-podium.jpg
レース2で優勝したブレガ(中央)、2位のラズガットリオグル(左)、3位のペトルッチ(右)
worldsbk-2025-rd5-nicol-bulega.jpg
レース2で一矢報いたブレガ。チャンピオンシップもリードし続けている

今季を席巻するブレガとラズガットリオグル。2人による接戦のチャンピオン争いは続きそうです。

第6戦エミリア・ロマーニャラウンドは、6月13日から15日にかけて、イタリアのミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで行われます。