メッツラーの市販タイヤに「6DAYS」というモデルがあるのを知っていますか?
メッツラーのラインナップの中でも、ひときわ存在感を放つ、サイドウォールに刻まれた6DAYSの文字。

メッツラーの6デイズエンデューロのサイドウォール
メッツラーのエンデューロタイヤ”MCE 6 DAYS EXTREME”

この名前は、世界で最も過酷なエンデューロレースISDE(International Six Days Enduro)通称「SIX DAYS」から来ています。

ISDEとは何か

ISDEの始まりは1913年。100年以上の歴史を持つ、世界最古のエンデューロ競技です。
この大会は、単なる個人レースではありません。各国を代表するライダーたちがチームを組み、国の名を背負って戦う「国別対抗戦」として発展してきました。

開会式に参加する各国のライダー

ライダー個人の速さや技量だけでなく、その国が培ってきたオートバイ文化、マシンづくりの思想、そして耐久性や信頼性に対する考え方までもが、この6日間で試されることになります。
6日間にわたり、毎日数百キロに及ぶコースを走破するISDEでは、岩場、泥、砂、ウッズ、高速リエゾン、そして長時間に及ぶ連続走行といった、あらゆる路面と条件がライダーとマシンを待ち受けています。

数百キロに及ぶコースの一部
ドローンで撮影されたコース風景

1日として同じ条件はなく、ライダーとマシンは6日間連続で、変化し続ける環境に適応しながら走り続けなければなりません。
しかし、このレースはただ速いだけでは意味がありません。
「6日間を走り切ること」「確実に完走し、結果を残すこと」
それこそが、ISDEというレースの本質です。

1913年当時のISDEと“6DAYS”の意味

ISDEが生まれた1913年当時、オートバイは今のような高性能・高耐久な乗り物ではありませんでした。
整備性は決して良いとは言えず、部品の耐久性も低く、タイヤやサスペンションの技術も未成熟。「走ること自体が挑戦」と言える時代です。
そんな環境の中で行われていたのが、6日間連続で走り続ける競技でした。
このレースは、単純にスピードを競うものではありません。
「6日間、走り続けられるかどうか」
それ自体が、マシンメーカーとライダー双方の技術力・信頼性・完成度を証明する試験だったのです。

1日目を全力で走れたとしても、2日目、3日目とトラブルなく走り続けなければ意味はありません。
6日目にマシンが壊れてしまえば、それまで積み重ねてきた努力は、すべて無に帰します。
だからこそISDEでは、「壊れないこと」、「確実に前へ進み続けること」が、何よりも重視されてきました。
つまり、SIX DAYSとは「スピードを競う」以前に、信頼性と総合力を試すレースなのです。

スタートを待つライダーたち

国別対抗という特異なレース形式

ISDEの大きな特徴のひとつが、今も変わらず採用されている「国別対抗」という形式です。
国別トロフィーチームは、必ずしも同じメーカーや同じチームで構成されているわけではありません。
異なるメーカー、異なるチーム、異なるサポート体制に身を置くライダーたちが、「国を代表する」という1点で集まり、6日間を戦います。
だからこそISDEでは、一発の速さよりも、6日間を通して安定して走れるマシン、そして確実に積み重ねられる走りが重要になります。
この考え方は、ISDE全体に共通する価値観であり、「SIX DAYS」という名前の意味をより明確にしています。

2025年 イタリア大会 ― エンデューロの国で走る6日間

2025年のISDEは、第99回大会として、イタリア・ベルガモを拠点に開催されました。
イタリアは、数多くのエンデューロマシン、トップライダー、そして世界的なオフロードブランドを生み出してきた エンデューロの国とも言える存在です。
その中心地のひとつが、ベルガモという土地でした。
ベルガモは北イタリアに位置し、ミラノから車で約1時間弱。歴史的な街並みと山岳エリアが隣接するこの地域は、ISDEの舞台として非常に象徴的な場所です。

ISDEに参戦する日本チームのメンバー
開会し会場に向かう日本チーム

ベルガモ周辺の山岳ルートは、テクニカルな登り下り、リズムの難しいウッズ、そして高速区間が巧みに組み合わされた、ISDEらしいコース設定が特徴です。
レース期間中は単に競技をこなしているだけでなく、イタリアという国が育んできたエンデューロ文化そのものの中を走っているそんな感覚になります。

ベルガモに設営されたコース

またこの大会では、ベルガモ発祥のオフロードブランドAcerbisが大会のメインパートナーとして深く関わり、地元に根付いたブランドが大会を支え、その舞台を世界中のライダーが走る。
この風景こそが、ISDEが単なるレースではなく、文化と歴史を体感する6日間のイベントであることを強く印象づけていました。

SIX DAYSという名前が持つ意味は、歴史や舞台背景を知ることで、確かに理解できます。
しかし、ISDEの本質は、実際にその6日間の中に身を置かなければ見えてきません。
次回は、2025年イタリア大会に挑んだ日本人ライダーとともに生活し、その6日間を間近で見てきた私の視点から、ISDEの現地に流れていた空気をお伝えしていきたいと思います。