2027年からMotoGPクラスの単独タイヤサプライヤーを務めるピレリが、9月21日、オーストリアのレッドブル・リンクで2027年シーズンに向けたタイヤテストを実施しました。
今回参加したのは、レースライダーとテストライダーを合わせた18人。Honda、Yamaha、Ducati、Aprilia、KTMの5メーカーが参加し、2027年から導入される850ccのプロトタイプマシンと、2027年仕様を模擬するために調整された現行1000ccマシンを使ってテストが行われました。
日本からはHonda HRCの開発ライダー、中上貴晶も参加。フロント、リアともにソフト、ミディアム、ハードのスリックタイヤが用意され、2027年に実際に供給されるタイヤレンジの特性をさらに絞り込むためのデータが集められました。
目次
中上貴晶、最初のプロトタイプテストから開発に参加
今回、日本からはHonda HRCの開発ライダーを務める中上貴晶が参加しました。
中上は、2027年用ピレリタイヤの開発に今回初めて加わったわけではありません。
2025年9月にミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで実施された最初のMotoGP用ピレリタイヤテストでも、Hondaのテストライダーとして参加。Yamahaのアウグスト・フェルナンデス、KTMのダニ・ペドロサ、Apriliaのロレンツォ・サバドーリ、Ducatiのミケーレ・ピッロとともに、最初期のプロトタイプを評価しています。
それから約1年後となる今回のオーストリアでは、Hondaからヨハン・ザルコ、ディオゴ・モレイラ、中上の3人が参加しました。
中上はテスト直前のオーストリアGPにも、ジョアン・ミルの代役としてHonda HRC Castrolから参戦。13位でポイントを獲得した翌日、そのまま同じレッドブル・リンクで2027年用タイヤの評価に臨んでいます。
Hondaの開発ライダーとして、最初のプロトタイプから継続して2027年用タイヤの評価に関わっている点でも、中上は今回のテストにおける注目すべき存在の一人です。
850cc化だけではない。2027年はMotoGPマシンそのものが変わる
2027年のMotoGPでは、エンジン排気量が現在の1000ccから850ccへ縮小されます。
最大ボアも81mmから75mmへ縮小。最高速を抑えながら効率を高めることが、新しい技術規則の大きな狙いです。
しかし、2027年の変更はエンジンだけではありません。
現在使われているライドハイトデバイスとホールショットデバイスは全面的に禁止され、空力についても規制が強化されます。レース時の燃料タンク容量も22リットルから20リットルへ縮小されます。
つまり2027年は、単に「排気量が150cc小さくなる」のではなく、加速、減速、車体姿勢、空力など、タイヤと密接に関係するマシン側の条件そのものが変わります。
そのため、現在の1000cc MotoGPマシンで性能を発揮するタイヤを、そのまま2027年へ持ち込めばいいわけではありません。
実際、2025年の最初のテストからピレリは、現行マシンを使用する場合にはライドハイトデバイスを無効化し、一部ではエンジン出力や空力も変更。できる限り2027年型850ccマシンに近い特性になるよう調整した上でタイヤを評価してきました。
そして今回は、すでに実車として開発が進む850ccプロトタイプと、2027年仕様をシミュレートした1000ccマシンの両方が走行しました。
新しいマシンがタイヤにどのような入力を与えるのか。その変化を見越しながら、グリップ、安定性、ハンドリングなどをバランスさせていくことが、現在進められているタイヤ開発のポイントになります。
ソフト、ミディアム、ハードを前後で評価
今回、ピレリはフロント、リアともにソフト、ミディアム、ハードの3種類のスリックタイヤを用意しました。
各チームは独自のテストプログラムを組み、ピレリはソフトから走行を始め、その後ほかのコンパウンドへ移っていく段階的な評価方法を推奨しています。
テスト当日のレッドブル・リンクは晴天。路面温度は19℃から38℃まで変化し、異なる温度条件の中で各仕様のフィーリングと性能が確認されました。
ピレリのモーターサイクル・レーシング・ディレクター、ジョルジオ・バルビエールによれば、ライダーからのフィードバックは全体としてポジティブで、特に「グリップ」と「安定性」が高く評価されました。
また、今回得られた情報をもとに開発をさらに進め、2027年に実際に供給するタイヤレンジの特性をより明確に定めていくとしています。
2025年の最初のテストでは、フロント2仕様、リア3仕様のプロトタイプから基本的な方向性を探っていました。それに対し今回は、前後それぞれソフト、ミディアム、ハードを18人が評価しています。
開発の焦点が、プロトタイプタイヤそのものの成立性を確認する段階から、実戦で使用するレンジをより具体的に作り込む段階へ進んできたことがうかがえます。
5メーカーから18人が参加
今回のテストには、5メーカーから合計18人のレースライダーとテストライダーが参加しました。
| メーカー | 参加ライダー |
|---|---|
| Honda | ヨハン・ザルコ、ディオゴ・モレイラ、中上貴晶 |
| Yamaha | トプラク・ラズガットリオグル、ジャック・ミラー、イサン・グエバラ、アウグスト・フェルナンデス |
| Ducati | マルク・マルケス、フランコ・モルビデリ、フェルミン・アルデゲル |
| Aprilia | マルコ・ベッツェッキ、ラウル・フェルナンデス、ロレンツォ・サバドーリ |
| KTM | ペドロ・アコスタ、ブラッド・ビンダー、ポル・エスパルガロ、マーベリック・ビニャーレス、セナ・アギウス |
MotoGPで豊富な経験を持つライダーに加え、テストライダーや2027年から最高峰クラスを戦うルーキーも参加。異なるマシン、経験、ライディングスタイルから幅広いフィードバックを集められたことも、今回のテストの特徴です。
ミサノ、ブルノ、オーストリア。広がる開発プログラム
2027年MotoGPに向けたピレリの実走開発は、2025年9月のミサノからスタートしました。
最初のテストに参加したのは5メーカーのテストライダー。ピレリはフロント2仕様、リア3仕様のプロトタイプを用意し、タイヤの基本的な方向性を確認しました。
その後も各メーカーとのプライベートテストを重ね、2026年6月のブルノでは、初めて各メーカーが選んだ契約レースライダーが参加しました。
ブルノではマルク・マルケス、ペドロ・アコスタ、マルコ・ベッツェッキらも走行。一部のライダーはスプリントレースを想定した走行やフルレース距離のロングランまで実施し、実戦に近い条件で評価が進められました。
そして今回のレッドブル・リンクでは参加人数が18人まで拡大し、前後ともソフト、ミディアム、ハードという幅広いコンパウンドを評価しています。
テストライダーを中心に基本特性を確認したミサノから、現役ライダーによる実戦的な評価を加えたブルノ、そしてさらに多くのライダーとコンパウンドを投入したオーストリアへ。
2027年の実戦投入に向け、ピレリのタイヤ開発は段階的に規模と評価項目を広げています。
次の大きなステップはバレンシア
今後もピレリは、5メーカーとのプライベート開発と合同テストを並行して進めていきます。
次の大きな節目となるのは、12月初旬にバレンシアで予定されているテスト。ピレリによると、このテストには2027年シーズンを戦うレースライダー全員が参加する予定で、2027年用タイヤレンジの完成に向けて、さらに実戦に近い評価が行われることになります。
850ccエンジン、新しい空力規則、ライドハイトデバイスの廃止、そして新たなタイヤ。MotoGPが大きく姿を変える2027年へ向けて、ピレリの開発プログラムは着実に次の段階へ進んでいます。
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