MotoGP開幕戦 タイGP
2月27日〜3月1日/タイ・ブリーラム(チャン・インターナショナル・サーキット)
2026年シーズンが、厳しい暑さと低グリップで知られるタイのブリーラムで開幕を迎えました。路面温度は最大60℃を記録。この難しいコンディションにおいてタイヤに求められたのは、「一発の速さ」だけでなく、変化する路面状況でもライダーを支え続ける“安定したグリップ力”でした。
- Moto2:新スタンダードの「SC0」リアタイヤが高いパフォーマンスを発揮。2度の赤旗中断を挟む難しい展開のレースをマヌエル・ゴンサレスが制しました。
- Moto3:最終コーナーまでもつれ込んだトップ争いは、わずか0.003秒差で決着。ダビド・アルマンサが初優勝を飾りました。
- 技術面:低グリップかつ高温の条件下で、ソフトタイヤの有効性が明確になりました。クラスによって各チームの選択傾向も分かれています。
タイヤアロケーション:Moto2は“新基準”SC0が主役、Moto3はフロント選択が勝負を分ける

Moto2クラスの焦点となったのは、リアタイヤの「SC0」です。昨季は開発仕様(E0125)だったこのコンパウンドは、今季からスタンダードのソフトタイヤへ昇格し、開幕戦からコースレコード更新に大きく貢献しました。フロントはソフト「SC1」との組み合わせが基本となり、各チームの選択は非常に明確でした。
一方のMoto3クラスは、リアタイヤこそソフト(SC1)とミディアム(SC2)で極端なタイム差は出なかったものの、フロントタイヤはソフトとミディアムで選択が分かれました。気温が上がり路面が滑りやすくなるブリーラムでは、フロントの接地感がレース終盤のペース維持に影響します。表彰台を獲得した選手間でもフロントタイヤの選択が異なったことは、今大会の難しさを象徴していると言えるでしょう。
予選ハイライト:開幕からレコード更新。路面温度50℃超の真昼にタイムが伸びた理由

Moto2クラスは、セナ・アギウスがポールポジションを獲得。さらにフリー走行ではマヌエル・ゴンサレスがトップタイムを記録し、SC0のスピードが週末の基準として定着しました。路面温度が50℃を超える時間帯でもタイムの落ち込みが少なく、「厳しい条件ほどソフトタイヤが機能する」というブリーラム特有の傾向が数字となって表れました。
Moto3クラスは、ダビド・アルマンサがポールポジションを獲得しました。上位陣のフロントタイヤ選択は二極化しており、決勝でのペース配分を見据えた戦略の違いがうかがえました。この選択が、決勝レースの最終コーナーでの結末につながることになります。
Moto3決勝:最終コーナーからの加速勝負──0.003秒差でアルマンサが初優勝
Moto3のトップ争いは、最終盤までもつれ込みました。アルマンサとマキシモ・キレスが先頭を争い、後続を引き離したものの、両者の差は僅差のまま推移します。コーナー立ち上がりのトラクションがストレートスピードに直結するコースレイアウトにおいて、最終コーナーからの加速が勝敗を分けました。
ライン取りやスロットルを開けるタイミングのわずかな違いが、ゴールライン上で0.003秒という差となって表れました。アルマンサがMoto3初優勝を挙げ、2位にキレス、3位には14番手スタートから追い上げたバレンティン・ペローネが入りました。
タイヤ選択を振り返ると、リアはほぼ全車がソフトSC1を選択。一方のフロントはSC1とSC2が混在し、表彰台の3名でも選択が分かれました。自身のライディングスタイルに合わせ、終盤までペースを保てるセットアップにまとめた選手が上位に入ったと言えます。


日本勢は三谷然が22位で完走し、山中琉聖は転倒後に再走して25位でチェッカーを受けました。
Moto2決勝:赤旗2度、“分断”されたレースを制したのはゴンサレス
Moto2クラスの決勝は、序盤のアクシデントによる赤旗中断後、再スタートでも転倒が発生。2度目の赤旗が提示され、残り7周の短いスプリント戦となりました。レースの流れが途切れ、路面温度やタイヤの状態も変化するなか、リスタートへの適応力と冷静な判断が求められました。
この難しいレースを制したのはマヌエル・ゴンサレスでした。終盤の勝負どころでトップに立つと、イサン・ゲバラの追撃を抑え切り、開幕戦勝利を手にしました。3位にはダニエル・ホルガドが入り、変則的な展開をしっかりと結果でまとめています。
タイヤは、フロントSC1とリアSC0の組み合わせが主流でした。度重なる再スタートという難しい条件にもかかわらず、SC0はタイムだけでなく安定性の面でも機能し、新スタンダードタイヤとしての性能を証明する大会となりました。


日本勢は佐々木歩夢が10位でポイントを獲得し、古里太陽は16位で完走しました。
テクニカルまとめ:ピレリ モーターサイクル・レーシング・ディレクターの視点
ピレリのモーターサイクル・レーシング・ディレクターを務めるジョルジオ・バルビエは、開幕戦を次のように総括しています。
「日曜日は週末で最も暑く、気温35℃、路面温度はピーク時で60℃に達する条件下でレースが行われました。ブリーラムはもともとグリップが低いサーキットですが、この熱によってさらに低下します。そのため、不足するグリップを補うソフトタイヤが広く採用されました」
「特にMoto2では、全ライダーが新しいソフトの『SC0』リアとソフトの『SC1』フロントの組み合わせを選択しました。このタイヤは、オールタイムラップレコードと決勝でのファステストラップ更新に貢献しただけでなく、タイヤ交換なしで2度の再スタートを戦い抜いたライダーたちが示したように、安定したパフォーマンスを発揮することも証明しました」
「Moto3でも、リアにはソフト仕様がほぼ独占的に使用されました。一方でフロントの選択は、各ライダーのライディングスタイルや好みに大きく委ねられています。フロントにSC1を選んだアルマンサと、SC2を選んだキレスの接戦が示しているように、どちらの選択肢もレースで十分に機能していました」
超高温と低グリップという厳しい条件でもタイヤが性能を発揮し、ピレリにとって2026年最初のグランプリはポジティブな結果となりました。
次戦:ブラジルGP(ゴイアニア)
次戦は3週間後、世界選手権初開催となるブラジルのゴイアニア・サーキットで開催されます。路面の性質やコースレイアウトが変われば、タイヤに求められるトラクションの質も変わります。開幕戦でソフトタイヤを活用した各チームが、新しいサーキットでどのようなタイヤ戦略を展開するのか、今後のシーズンを占う一戦となりそうです。





