写真:Pirelli
テキスト:伊藤英里
MotoGP第21戦ポルトガルGP
11月7日~9日/ポルトガル アウトドローモ・インターナショナル・アルガルベ
特殊なレイアウトのポルティマオ、Moto2クラスのリヤタイヤに開発ソフトE0125を投入
ポルトガルGPの開催地、アウトドローモ・インターナショナル・アルガルベは、アップダウンが大きいこと、高速コーナー、ブラインドコーナーがあることで知られています。高速の長い左コーナーである最終コーナーは、タイヤに横方向と縦方向の高い負荷がかかり、下り坂でのブレーキングでは、フロントタイヤに大きなストレスがかかります。
このサーキットに、ピレリはMoto2クラスのリヤタイヤとして、2種類のソフトコンパウンドを用意しました。ひとつはスタンダードのSC0、もうひとつは開発仕様のE0125です。E0125は今季これまでに9大会で投入され、スタンダードのSC0と同じコンパウンドを使用しつつ、より進化した構造が採用されています。
Moto2クラスの決勝レースでは、全ライダーがリヤタイヤにE0125を選びました。

Moto3:古里太陽が2戦連続の表彰台
Moto3クラスに参戦する古里太陽(ホンダ・チームアジア)は、金曜日のプラクティスを2番手で終えました。土曜日のQ2では強い風が影響して11番手となりましたが、「初日よりも走りはよくなっている」と前進を感じていたようです。
そして、日曜日の決勝レースではレース中盤以降に表彰台圏内に加わりました。12、13周にはトップを走行。終盤にはタイヤが苦しくなったということですが、これはタイヤの選択が分かれたこともひとつの要因だったようです。古里はフロント、リヤともにソフトでしたが、優勝したマキシモ・キレス(CFMOTO ガビオタ・アスパー・チーム)はフロント、リヤともにミディアム、2位のアンヘル・ピケラス(フリンサ-MTヘルメット-MSI)はフロントにミディアム、リヤにソフトを選んでいました。
それでも古里は3位をキープし、チェッカーを受けました。古里は前戦マレーシアGPで初優勝を飾っており、2戦連続の表彰台獲得となったのです。
レース後、トップ3の囲み取材で「今まででいちばんうれしいです」と笑顔で言いました。
マレーシアGPでの優勝があったからこそ、今回のレースの現実的なベストリザルトだろう3位を獲得しようと戦い、その位置でゴールできた。古里はそこに手応えを感じていたのでした。
「(マレーシアで)勝っていなかったら、ここでも勝ちにいっていたと思う。そうしたらミスをして転倒していたかもしれない。今日についてはベストで走っても、3位だったと思うんです。2位にはなれなかったし、1位はもっと無理があった。それを判断できるようになったのは、よかったと思います」


一方、今季Moto3クラスにレギュラーライダーとして参戦してきた山中琉聖(フリンサ-MTヘルメット-MSI)は、左手小指の手術を受けたため、最終戦バレンシアGPまで欠場することが発表されています。
日本人ライダーとしては、ポルトガルGPとバレンシアGPに、ホンダ・チームアジアからタットチャコーン・ブーシュリーの代役として三谷然が参戦しています。三谷は2026年シーズンからホンダ・チームアジアよりMoto3クラスに参戦することが発表されており、一足早くチームに合流した形です。
三谷は2024年イデミツ・アジア・タレントカップのチャンピオンで、今季はFIMジュニアGP世界選手権とレッドブルMotoGPルーキーズカップに参戦。まさにピレリがサポートするRoad to MotoGPの道のりを歩んできたライダーです。Moto3クラスの参戦は、インドネシアGPでの代役参戦に続き、今回で2戦目となります。
19番手からスタートした三谷は、後方の集団でポジション争いを展開。19位でゴールしました。
「全員すごく速いし、レースディスタンスが長い」と、三谷は世界選手権の実感を語ります。当然ながら、ロードレース世界選手権を戦うすべてのライダーは、三谷がイデミツ・アジア・タレントカップのタイトルホルダーであるように、いずれかの選手権で活躍してきたライダーなのです。
「ジュニアGPやルーキーズカップはタイヤマネジメントを考えなくていい周回数なので、今回は(タイヤマネジメントの必要性を)すごく感じました。タイヤを温存しようと思って、5人くらいの集団の2、3番手あたりで走っていたんですけど、結局最後にはタイヤが終わってしまった。一度ミスをして集団から離されてからは、差を詰められずに終わってしまいましたね」
三谷はバレンシアGPも代役としてMoto3クラスに参戦します。
Moto2:國井は週末通してフィーリングに苦戦。佐々木は転倒リタイア
Moto2クラスでは、國井勇輝(イデミツ・ホンダチームアジア)が28番手からスタートして、23位でした。
ポルトガルGPの週末は、金曜日の夜に降った雨によって土曜日の午前中は濡れた状態が残り、以降のセッションは路面の回復が見込まれるため、Moto2クラスのフリープラクティス2では、多くのライダーが走行を見送りました。國井もこのセッションでは3周したのみで、いつもよりも走行時間が短い週末となったのです。
「昨日からバイクのいいフィーリングがつかめず、セッティングもいいところが見つからない状態でした。さらに雨も重なって乗る時間が少なくなり、いい状態を作れなかったのが今回のレースを難しくさせた要因だと思います」
佐々木歩夢(RW-イドロフォーリャ・レーシングGP)は、23番手からスタートしたのち、5周目に5コーナーで転倒を喫し、リタイアとなりました。佐々木はこのとき他のライダーを巻き込んだことで、次戦決勝レース(現在のところ最終戦バレンシアGP決勝レース)でのロングラップ・ペナルティが科されています。
「今週末は常にエンブレとバイクを止めるのに苦しんでしまいました。ウイークも土曜日の朝は雨でしっかり走れなかったので、詰め切れなかったという感じですね」
「転倒は、5コーナーで前のライダーを抜いたとき、さらにその前にいたライダーのリヤタイヤに少し接触してしまいました。ボクのミスです。悔しいですが問題は分かっているので、最終戦を気持ちよく終われるように準備していきたいです」
最終戦バレンシアGPは、11月14日から16日にかけて、スペインのリカルド・トルモ・サーキットで開催されます。





